みなさん、こんにちは!
この夏、日本は記録的な猛暑に見舞われました。関東では35度を超える猛暑日が過去最多を更新し、干ばつや豪雨による農作物被害も相次ぎました。
気象庁が発表した「気候変動2025」では、日本の年平均気温が100年あたり1.4度の割合で上昇しているとされ、国際的に掲げられている「気温上昇1.5度以内」の目標はすでに危機的な状況にあることが明らかになりました。
こうした中で注目されるのが、再生可能エネルギーの可能性です。今日は「浮体式洋上風力」によって地域経済や漁業までも活性化させた長崎・五島の事例を取り上げたいと思います。
五島で生まれた「奇跡」
長崎県五島市では、浮体式洋上風力発電の実証事業から商用化へと挑戦が進められてきました。水深の深い海域でも設置可能な「浮体式洋上風力」は、海底固定型の制約を超える技術です。
五島での取り組みは単なるエネルギー事業にとどまりませんでした。
- 海中の柱が魚礁となり、サンゴや魚が集まり水産業が活性化
- 洋上風力の組立工場が建設され、地元雇用が拡大
- 地域商工会議所や漁業組合が主体的に関与し、「地域が主役」の形で進行
まさに「脱炭素と地域振興の両立」を体現した事例として注目されています。
再エネは「脱炭素」だけではない
元五島ふくえ漁業協同組合組合長の熊川長吉さんはこう語りました。
「僕は洋上風力をやりなさいという人じゃない。この浮体式洋上風力を活用して、水産業を良くしたい」
この言葉が示すのは、再エネの真の価値です。単なる脱炭素手段ではなく、
- 地域の自然と共生すること
- 地元産業と好循環を生むこと
- エネルギー自給率を高め、地域の未来をつくること
再エネは「地域の希望」そのものになりうるのです。
「石油から再エネへ」時代の転換点
福江商工会議所会頭の清瀧誠司さんは、長年ガソリンスタンドを経営してきた“油屋”だからこそこう語ります。
「石炭から石油に変わっているように、石油から再生可能エネルギーに変わるのが時代の流れだと思う」
清瀧さんは五島市民電力を立ち上げ、地域で再エネを供給する仕組みを作りました。
化石燃料を扱ってきた人たちが、新しい時代を先導する姿勢は大きな示唆を与えてくれます。
気候正義とジェンダーの視点
この事例を取り上げたテレビ朝日の特番では、2023年の放送には登場しなかった女性が、2024年・2025年には重要な役割を担って紹介されました。
- 五島で初の女性市長として導入を決断した中尾郁子さん
- 長年海女漁を続けてきた門木奈津希さん
- スコットランド自治政府の洋上風力担当局長、ミシェル・クインさん
気候変動の影響を受けやすいのは、途上国の人々や女性・子どもなど社会的に弱い立場に置かれた人々です。その意味で、再エネの現場で女性の存在感が高まることは「気候正義」を実現する上でも重要な一歩です。
日本が抱える課題と「希望」
日本の再エネ比率はまだ22.9%(2023年度)。2030年には36〜38%を目指すとしていますが、石炭依存を完全に脱する見通しは立っていません。
一方で、五島の事例は私たちに「希望」を見せてくれます。
- 技術革新(浮体式洋上風力)
- 地域の主体性(漁協・商工会議所・市民電力)
- 多様な人材の関与(行政・女性リーダー)
これらが組み合わさった時、再エネは単なるエネルギー政策ではなく「地域の未来を支える仕組み」へと変わっていきます。
五島が教えてくれること
五島の取り組みは、私たちにとっても重要な示唆を与えてくれます。
ソーラーシェアリングや蓄電池、VPPといった取り組みは、単に「再エネを売る」だけでなく、
- 地域の農業や水産業と結びつく
- 地域の雇用や産業の基盤を強化する
- 自治体や農協と協力しながら「エネルギーの地産地消」を広げる
といった発展の可能性を持っています。
再エネ事業は発電ビジネスにとどまらず、地域そのものを持続可能にする仕組みへと広がっていけるのです。
五島の浮体式洋上風力は、「再エネ=脱炭素」だけではなく、
- 水産業や雇用の活性化
- 地域の自立性向上
- 気候正義を意識した社会変革
といった多面的な価値をもたらすことを示しました。
異常気象が日常化する中で、日本が再エネに舵を切るスピードはまだ十分ではありません。しかし、五島のような事例が全国に広がれば、「気候変動に立ち向かう希望」を現実のものにできるはずです。
そして会津からも、地域に根ざしたエネルギーの未来を形にしていきたいと考えています。