みなさん、こんにちは!

今日は「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」が制度化から12年を迎えた今、その実績と課題、そしてこれからの展望について考えてみたいと思います。

現状、普及は進みつつも課題も顕在化

2013年に農水省が「一時転用許可」を制度化して以降、導入件数は累計5,351件・約1,200ヘクタールに達しました。

ナスやピーマンといった遮光が有利に働く作物では収量が改善した例もあり、酷暑の中で「日陰効果」が農業にプラスとなることが実証されつつあります。

また、クボタやヤンマーといった農機メーカーの参入、エネルギー基本計画への明記など、制度的にも技術的にも後押しが進んでいます。

一方で、「農地がパネル置き場化」しているとの批判もあり、榊(さかき)のように作付面積は大きいが収量ゼロという形骸化事例も少なくありません。水稲では平均23%の収量減という研究結果もあり、作物適性の見極めが重要課題になっています。

深刻化する課題

営農形骸化

「農業をなめるな」との声が農業委員会からも上がる。

作物選定の難しさ

水稲は収量減が顕著、販路不在の作物も多い。

制度運用

過去は「ザル」だった一時転用許可が厳格化され、現場は混乱。

社会的受容性

消費者・農家双方から疑念を抱かれるリスク。

経済性

投資負担は大きいが、新規就農支援の可能性もある。

突破口はどこにあるのか?

突破口は大きく5つに整理できます。

01

技術・作物選定の突破

遮光適性が高く、販路のある作物を軸に。
可動式パネルやスマート農業との融合もカギ。

02

信頼性・透明性の突破

収量データ・販売実績を可視化し、営農を「数字」で証明。
優良事例のパッケージ化が普及の決め手。

03

新規就農支援の突破

「農業+売電」で経済的に持続可能な就農モデルを確立。
売電収入が収穫までの無収入リスクをカバー。

04

地域エネルギー統合の突破

発電した電気を農業用EV・電動ポンプ・冷蔵庫などに活用。
BESS連携で農業の電化と災害レジリエンスを強化。

05

消費者参画の突破

生協やCSA(Community Supported Agriculture)の仕組みと連携。
消費者が出資・購入で関与し「農業をなめるな」批判を回避。

CSAとは

CSA(Community Supported Agriculture)とは、生産者と消費者が連携し、流通業者などを介さずに直接契約で野菜を定期購入する仕組みです。日本では「地域支援型農業」と言われることもあります。
基本的には、半年や1年などの単位で契約して消費者に代金を前払いしてもらうことで、生産者は種苗や資材などの購入費に当てるなどして持続的な農業経営を行える仕組みになっています。

消費者参画の可能性

馬上さんが記事内で語るように、都市部の消費者が「生産者を支える仕組み」を取り戻すことは重要です。

再エネと農産物をセットにした「地産地消の食と電気」の仕組みが実現できれば、ソーラーシェアリングは農業と消費者をつなぐ新しいインフラへ進化するはずです。

著者コメント

CSA(Community Supported Agriculture)の仕組みについて、もう少し機会があれば深掘りしたいと思いました。

特に、消費者が関わる仕組みというのは、ITが得意とする分野だろうと思います。例えばクラウドファンディングも、消費者がモノができる前に関与する仕組みとしても成り立っています。

皆さんもご存知の「食べチョク」や「ポケマル」などもそうしたCSA的要素を持ち、消費者が生産者をフォローしながら購入するものとなっています。

再エネ業界にいる我々からすると、消費者が「地産地消の食と電気」を一緒に支援できる仕組みが良さそうですね。

齋藤 浩昭
AiNERGY株式会社 取締役

著者プロフィール
ソフト開発を経て独立し、ITベンチャーを創業(2004年グリーンシート公開、Deloitte Fast50国内3位)。その後、三陸牡蠣復興支援プロジェクトを立ち上げ、3億円超のクラウドファンディングを実現、国内牡蠣業界の革新にも寄与。
2019年MBA取得。2023年からAiNERGYで再エネ×IT事業を推進中。