
出典:毎日新聞
みなさん、こんにちは!
今日は少し衝撃的なニュースを取り上げます。トランプ米大統領が国連総会の演説で「気候変動対策は世界史上最大の詐欺」と発言しました。
私たちが普段、危機感をもって注目しているテーマだけに、聞き捨てならない内容です。
トランプ氏の国連演説とは
2025年9月23日、国連総会の一般討論演説で、トランプ氏は以下のように主張しました。
- 気候変動対策は「世界史上最大の詐欺」
- 再生可能エネルギーは「高価で機能しない」
- 石炭は「クリーンで美しい」
一方、同じ場で多くの首脳は気候変動対策の加速を訴えており、明確に国際潮流と逆行する発言でした。
歴代トランプ政権とのつながり
トランプ氏は1期目(2017〜2021年)でもパリ協定からの離脱を宣言し、環境規制の大幅な緩和を進めました。今回の発言はその延長線上にあり、特に以下の点で一貫しています。
- 石油・ガス業界との強い結びつき
- 石炭産業の復権を掲げる姿勢
- 国際的な合意よりも「米国第一」を前面に出す戦略
つまり今回の演説は突発的な挑発ではなく、過去の政策路線を再確認させるものでした。
なぜ今この発言なのか
政治的な文脈を整理してみました。
国内政治と支持基盤
石油・ガス業界は共和党の有力支援層。産業雇用を守る構図が有権者にも響きます。
規制巻き戻し戦略
2022年の米最高裁判決(West Virginia v. EPA)はEPAの規制権限を制約。
さらに保守系シンクタンク「Project 2025」は、環境規制縮小を政策方針に掲げています。
エネルギー価格をめぐる物語づくり
「再エネは高い・不安定」という印象操作は有権者へのメッセージとして有効です。
外交交渉カード化
パリ協定を揺さぶることで、通商や同盟関係での交渉材料に使う狙いも見えます。
「再エネは高価で機能しない」との発言ですが、IRENAによれば、2024年に導入された再エネの9割以上が化石燃料より低コスト。太陽光の発電コストは化石燃料の平均より4割以上安いのです。
IPCCの報告書では、人為的な温暖化の影響は極めて高い確度で確立済み。「誇張で間違い」という発言は根拠を欠いています。
演説の政治的合理性は一定程度理解できるものの、現実のデータや科学的知見とは大きく乖離しています。
国際潮流との逆行
同じ国連総会で、インドネシアやブラジルをはじめ多くの首脳が「気候変動対策の加速」を訴えました。特に11月のCOP30を控え、各国はより野心的な削減目標を提示する姿勢を見せています。
その流れの中で、世界第2位の排出国である米国のトップが「詐欺」発言をすることは、国際社会に大きな波紋を広げました。
米国内で進む「静かな脱炭素」
興味深いのは、米国内のすべてがトランプ氏の方向に向かっているわけではない点です。
- カリフォルニア州やニューヨーク州は独自に再エネ拡大を進めている
- GoogleやAmazonなど大手企業は24/7再エネ調達を表明済み
- 新規の太陽光・風力は化石燃料より低コストで拡大中
つまり「連邦政府トップの言説」と「州・企業の現実」は大きく乖離しているのです。
誤情報が持つ影響力
ここで注目すべきは「大統領の発言は、それ自体が情報空間に与える影響力が極めて大きい」という点です。
SNSで切り取られ、文脈を外れて拡散されれば、「再エネ=高コスト」という誤った認識が市民や投資家に再生産されてしまいます。
科学的に誤りであっても、政治的な立場やメディアの力学によって“事実”が歪められるリスクを改めて考える必要があります。
政治と科学のギャップから見えること
この発言から見えてくるのは、政治家の言葉は「支持基盤に向けたポジショントーク」である場合が多いという現実です。
気候危機そのものよりも、目前の選挙や産業ロビーとの関係が優先される構図は、改めて考えさせられるところです。
著者コメント
はっきりしているのは、「再エネは化石燃料より高く、機能しない」という主張が明確に誤りである、という点です。
気候変動問題はどうしてもポジショントークの応酬になりがちですが、私は個人的に、エネルギーの地産地消を軸に再エネを推進すべきだと考えています。
なぜなら、本当に災害に強い国をつくるには、食とエネルギーをできる限り地域で生産し、地域同士が相互に支え合える仕組みを持つことが不可欠だからです。Aの地域が被災しても、隣のBやCがすぐに補完できる体制があれば被害を最小化できます。
逆に、食とエネルギーが一部地域に集中していて、そこが被災すれば国全体が大きなリスクにさらされます。
したがって「強靭な国」とは、地域の人々が持続的に暮らしていける仕組みを持つ国であり、その実現のためには、私たちが進めているエネルギーの地産地消こそが極めて重要だと考えています。