みなさん、こんにちは!
今日はペロブスカイト太陽電池の生みの親、宮坂力教授が開発した新しい構造についてご紹介します。
コスト3割減・長寿命化というブレークスルーが、再エネ業界にどんな意味を持つのか整理します。
宮坂教授の挑戦!電荷輸送材を不要に
今回の技術革新のポイントは「電荷輸送材を使わない」構造です。

- 従来は必須だったが、コスト高・劣化要因・製造工程の複雑化を招いていた。
- 宮坂氏は代替構造を開発し、コスト3割削減と寿命延長を同時に達成。
- さらに製造工程が簡素化し、量産適性も高まる。
従来の「効率最優先」から、「安さ・寿命・量産性」を兼ね備える段階に入ったことが大きな意味を持ちます。
ペロブスカイトの「二段ロケット」シナリオ
この技術をどう位置づけるか?「二段ロケット方式」で理解するとわかりやすいと感じています。
第一段ロケット(現行型ペロブスカイト)
推進力 | 国の補助金、パイロットライン、積水化学・パナソニックHDなど大手の取り組み |
役割 | まずは社会実装、信頼性の検証、小規模案件での実績づくり |
課題 | 高コスト・寿命不足 → 大規模普及はまだ遠い |
第二段ロケット(新構造型ペロブスカイト)
推進力 | 電荷輸送材不要による低コスト化と長寿命化 |
役割 | シリコンを凌駕する価格競争力で、外壁・車両・インフラなど新市場を切り開く |
タイミング | 2028〜2030年、本格普及期に突入 |
つまり今は「助走フェーズ」であり、次の段階に向けて基盤を築いている真っ最中ということです。
EPCにとっての示唆
この変化はモジュールメーカーだけの話ではありません。EPCにも大きな転換を迫ります。
実証案件での経験蓄積
学校や庁舎など公共案件への導入を通じて、施工・信頼性の知見を積むことが不可欠です。
建材一体型(BIPV)市場の立ち上げ
外壁やカーポート、物流倉庫、仮設建築など「軽さ・曲がる」という特性を生かせる新市場で存在感を示すチャンスがあります。
サプライチェーンとの早期連携
モジュールメーカーだけでなく、建材・工法メーカーとの協業を進め、将来の量産・普及に備えた施工プラットフォームを築く必要があります。
私たちにとってのポイントは「施工業者から建物インテグレーターへ」役割が広がることです。
従来は屋根上の設置が中心でしたが、ペロブスカイトは外壁や都市インフラにまで市場を広げます。
つまり、EPCは「再エネを屋根に載せる会社」から「建築物に電力機能を組み込む会社」へと進化する必要があるのです。
世界市場と日本の立場
ペロブスカイト市場は2040年に約4兆円規模へ。特に中国は圧倒的なコスト競争力で量産化を急いでいます。
一方、日本はヨウ素資源の強みと宮坂氏の技術・特許群を持つ「地の利」を持っています。
宮坂氏が強調する「今こそ日本が安価な国産品を提案しなければならない」という言葉は、まさに再エネ産業全体へのメッセージといえるでしょう。
ペロブスカイト時代に備える
ペロブスカイトは「軽さ」「柔軟性」「低コスト化」で、設置市場を根本から変える可能性があります。EPCにとっては施工対象が広がり、役割が「電気工事」から「建築・街づくりとの融合」へ拡張していきます。
第一段ロケット(現行型)で基盤を築き、第二段ロケット(新構造型)で一気に市場を押し広げる。
その時、誰が実装の担い手になれるか、EPCにとって最大の勝負どころが近づいています。
著者コメント
太陽光発電モジュールをつくるメーカーも大変革ですが、実はEPC側も大変革を求められるというのがこのペロブスカイトです。
例えば、屋根に太陽光パネルを載せられなかった家が全部ターゲットになったり、設置コストの勝負から面積確保の勝負に変わったり、またEPCは建物の外装インテグレーターになるかもしれません。
いずれにしても、このペロブスカイト時代は間違いなく到来し、私たちの事業は根底から考え方を変えるときがくるという認識だけはしておいたほうが良いと思っています。