出典:日本経済新聞

みなさん、こんにちは!

今日は九電みらいエナジーが福岡空港で開始する「カルコパイライト太陽電池」の実証試験についてご紹介します。軽量かつ柔軟な次世代パネルが、これまで設置できなかった屋根や場所に可能性を広げています。

カルコパイライト太陽電池とは?

ご存知の方も多いペロブスカイト太陽電池と同様、軽量で薄く、曲げることができる次世代の薄膜太陽電池です。

重量1㎡あたり0.8kg(シリコン型の約20分の1)
発電効率18%(シリコン型よりやや低い)
耐用年数ペロブスカイトより長く、長期利用に有利
カルコパイライト太陽電池の特徴

今回、福岡空港国際線ターミナルの屋根に12㎡を設置し、2025年12月から2026年2月まで発電データを収集します。

特に注目は、弱い光でも発電可能という特性。発電時間の拡大や、既存パネルとの性能比較も行われます。

軽量パネルの施工性と新しい適用領域

従来の太陽光パネルは重量がネックで、設置許可を得ても「屋根強度不足」で断念するケースが多々ありました。

カルコパイライトは軽量のため、

  • 耐荷重性の低い屋根
  • 架台不要の設置(工期短縮)
  • クレーンを使えない狭い通路

といった条件でも導入が可能になります。施工性の検証も今回の実証の大きなポイントです。

不採算案件の“復活チャンス”

EPCの現場では「屋根強度不足」を理由に設置できず、不採算に終わった案件が数多くあります。

カルコパイライトのような軽量パネルが実用化されれば、これまで取りこぼしてきた屋根案件を再び掘り起こせる可能性があります。

特に商業施設や工場など「広い屋根を持ちながら強度に制約がある建物」での活用が進めば、案件創出の幅が一気に広がるでしょう。

ペロブスカイトとの「タンデム型」で効率28%へ

ペロブスカイト主に紫外光を利用
カルコパイライト赤外光を利用

この二つを組み合わせると、発電効率28%のタンデム型が実現可能。コストは約10%増ですが、発電効率は1.5倍となり、既存シリコン型を大きく上回ります。

今後は、空港だけでなく工場・商業施設・公共施設など、広範な利用が期待されます。

BESS・PPAとの組み合わせで広がる事業モデル

軽量パネルが実用化されれば、単なる屋根設置の復活にとどまらず、以下のような事業展開も可能です。

01

BESS併設による需給調整

  • 軽量屋根に太陽光+蓄電池を組み合わせることで、ピークシフトや非常用電源を確保。
  • 出力制御リスクを回避し、自家消費率を高められる。
  • 需給調整市場への参入も視野に入る。
02

PPAモデルの拡張

  • 屋根強度の制約で導入できなかった施設でも、軽量パネルならPPA案件化が可能。
  • EPCやデベロッパーにとっては“眠れる屋根案件”の発掘 → 長期売電契約化という新しい収益源に。
03

空港や公共施設でのモデル展開

  • 空港という高発信力の場所で実証されることで、全国の公共施設や自治体案件への波及効果。
  • カーボンニュートラル化を目指す自治体PPAにおいて、採用される余地が広がる。

再エネ業界にとっての意味

今回の実証は単なる新素材のテストに留まりません。

  • 屋根強度の制約を超える軽量パネルの普及余地
  • 不採算だった屋根案件の再生という新しい市場開拓
  • 発電効率を飛躍させるタンデム型の商用化ロードマップ
  • BESSやPPAとの組み合わせによる新モデル
  • 補助金活用による実装促進(今回も福岡県の補助金を活用)

EPCやデベロッパーにとっては、案件の適地が拡大し、設置不可案件をビジネス化できる可能性があります。

軽量太陽電池が切り拓く新市場

福岡空港での実証は、空港という特殊環境での耐久性・施工性を確かめると同時に、軽量パネルが持つ“市場拡張力”を示すものです。

再エネ普及が屋根強度や設置条件に阻まれてきた現状を打破できるのか。

カルコパイライトとペロブスカイトの組み合わせが、BESSやPPAと融合し、次世代太陽光のスタンダードになるのか。注目が集まります。

齋藤 浩昭
AiNERGY株式会社 取締役

著者プロフィール
ソフト開発を経て独立し、ITベンチャーを創業(2004年グリーンシート公開、Deloitte Fast50国内3位)。その後、三陸牡蠣復興支援プロジェクトを立ち上げ、3億円超のクラウドファンディングを実現、国内牡蠣業界の革新にも寄与。
2019年MBA取得。2023年からAiNERGYで再エネ×IT事業を推進中。