みなさん、こんにちは!
今日はまもなく投開票を迎える自民党総裁選の中で、各候補が打ち出すエネルギー政策について取り上げたいと思います。
エネルギーは「外交・安全保障」「経済競争力」「脱炭素」のすべてに直結するテーマですが、候補者たちの主張は意外にも断片的。では、誰が何を語り、そこからどんな未来像が読み取れるのでしょうか。
候補者ごとのスタンス
高市早苗氏(技術革新と原子力依存)
高市氏は最も積極的にエネルギーを語る候補です。
- 原発再稼働、核融合、SMR(小型モジュール炉)など革新炉推進
- 「エネルギー自給率100%を目指す」と宣言
- 国産ペロブスカイト太陽電池に期待を寄せる一方、中国製パネルには強く反発
ただし、短期的に可能なのは「原発再稼働」だけであり、技術開発の不確実性をどう補うのかは不透明です。
小林鷹之氏(「脱炭素から低炭素」へ)
「脱炭素」ではなく「低炭素」を掲げる独自路線。
- 再エネ政策を見直すと明言し、「太陽光はもう限界」と発言
- 原発推進と資源開発を重視
再エネ全体に懐疑的な姿勢は異彩を放ちますが、LNG依存など他のリスクに言及が少なく、バランスに欠ける印象もあります。
小泉進次郎氏(再エネ推進からトーンダウン)
環境相時代には「再エネ最優先」を掲げましたが、最近は控えめ。
- 「再エネと原子力をフル活用する」という現実路線にシフト
- かつての勢いは見えず、スタンスは曖昧
林芳正氏・茂木敏充氏(党方針を踏襲)
独自性は薄く、無難な姿勢が目立ちます。
- GX(グリーントランスフォーメーション)を「次の資本主義」として推進
- 原発と再エネを組み合わせる党方針を継承
自民党のエネルギー政策全体像
党全体では「第7次エネルギー基本計画」に沿い、以下が軸となっています。
- 原子力再稼働と新型炉導入
- 再エネ・水素・CCSへの投資
- 核燃料サイクル維持
- カーボンプライシングには消極的
現状の産業構造を前提とした「現実的だが守り寄り」の政策といえます。
他党との比較、再エネ賦課金が焦点に
総裁選後に想定される自民党と維新・国民民主党との連立協議では、再エネ賦課金の扱いが焦点になります。
維新や国民は「賦課金徴収の一時停止」を主張していますが、その財源は年間3兆円規模。実現可能性は低く、国庫負担となれば財政圧迫は必至です。
この点は再エネ拡大を後押しする制度設計そのものを揺るがす可能性があり、調整力価値が高まる中での制度的不安定要素として注視が必要です。
自民党 | 現行制度を維持 |
維新・国民 | 賦課金徴収の一時停止を主張 (年間3兆円規模の負担が焦点) |
立憲・共産 | 脱原発 |
参政党 | 気候変動対策不要論 |
見えてこない「将来像」
候補者の発言は断片的で、未来のエネルギーミックス像が描けていません。
- 化石燃料依存リスクへの言及不足
- 調整力・貯蔵・制度設計への視点欠如
- カーボンプライシングや容量市場など国際的に進む仕組みへの関心も薄い
エネルギーは単に「原発か再エネか」ではなく、需給調整や制度改革を伴う総合的な設計が不可欠です。
原子力依存が進む中で高まる「再エネ+BESS」の価値
今回の総裁選で特徴的なのは、原子力依存を強める方向性が色濃く出ている点です。しかしこれは逆に、再エネ+BESS(蓄電池)の価値を一段と高める動きとも言えます。
- 原子力は「ベースロード電源」であり、出力調整が難しい
- 電力需要は日中・季節で大きく変動し、柔軟な調整力が必要
- 再エネ+BESSが「止められる・動ける電源」として
需給バランスを取る役割を担う
特に、昼間の太陽光出力が余剰となり抑制される局面では、BESSがそれを吸収し夜間に放電することで、エネルギーを無駄なく活用できます。
さらに需給調整市場や容量市場といった制度が整備され、調整力に明確な経済的価値が付与され始めています。つまり、原子力依存が強まるほど、再エネ+BESSは単なる補完電源ではなく、系統運用を支える中核アセットとなっていくのです。
エネルギー政策を「政治」が語れるか
候補者たちの発言は断片的で、エネルギー供給全体をどう設計するのかというビジョンに欠けています。しかし一つ見えてくるのは、原子力依存が進むほど、再エネ+BESSの調整力価値が高まるという現実です。
これからのエネルギー政策に必要なのは、単なる「電源ミックスの割合」ではなく、柔軟性・調整力・地域分散性をどう組み込むかという視点です。
そして、リスクとコストを国民に正直に提示し、合意形成を導く政治力も必要です。
エネルギー転換は待ったなし。次のリーダーに求められるのは「覚悟」と「具体性」だと感じます。