みなさん、こんにちは!
実は日本の電気の7割以上が火力発電でまかなわれているってご存知でしたか?今日は、この「火力発電」について、最近の動向や課題について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

なぜいま火力発電が注目されているのか?

日本の電力供給において、火力発電は現在約73%という圧倒的なシェアを占めています。特に興味深いのは、火力発電には「調整力」という大きな強みがあるということ。家庭のガスコンロのように出力を自在に調整できる特徴は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーが不安定な時のバックアップとして重要な役割を果たしています。

世界の目は厳しく

一方で、地球温暖化対策の観点から、世界の目は厳しさを増しています。イギリスが石炭火力を全廃し、ドイツやフランスも期限を定めて全廃を表明。そんな中、日本は新規の石炭火力建設終了を表明したものの、「今さら?」という厳しい声が上がっているのが現状です。

アンモニア発電という「切り札」?

ここで注目したいのが、愛知県碧南市で進められているアンモニア発電への挑戦です。水素と窒素で構成されるアンモニアは、燃焼時にCO2を排出しないという大きな利点があります。しかし、ここで考えなければならない重要なポイントがあります。実は、アンモニアには3種類あります。

アンモニアの種類

  • グレーアンモニア:従来型で、製造時にCO2を大量排出
  • ブルーアンモニア:CO2回収技術を使用し、排出量を抑制
  • グリーンアンモニア:再生可能エネルギーで製造、最もクリーン

現状では、コストの関係でグレーアンモニアが主流です。アンモニアを燃焼してもCO2は発生しませんが、そのアンモニアを製造する際に大量のCO2が発生してしまう…電気自動車がクリーンでも、その電気をつくる過程でCO2を排出するのと同じようなジレンマを抱えているわけです。

現実的な道筋とは?

日本のエネルギー事情を考えると、当面は火力発電に頼らざるを得ません。その中で、より現実的な選択肢として見えてくるのが、石炭よりも環境負荷の小さい天然ガス発電の活用です。
将来的にはCCS(CO2回収・貯留)技術の発展により、ブルーアンモニアへの移行が進むことが期待されます。

「CCS」「CCUS」とは

石油や石炭など「化石燃料」と呼ばれる燃料をエネルギーとして使う火力発電では、このCO2が多く排出されてしまいます。とはいえ、天候に左右されず、すぐに発電できる火力発電は、エネルギーの安定的な供給をおこなうため必要な電源(電気をつくる方法)です。そこで、火力発電のCO2排出量をおさえる(低炭素化)ため、さまざまな取り組みがなされています。「CCS」「CCUS」はその取り組みのひとつです。

「CCS」とは、「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、日本語では「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれます。発電所や化学工場などから排出されたCO2を、ほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入するというものです。

いっぽう「CCUS」は、「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略で、分離・貯留したCO2を利用しようというものです。たとえば米国では、CO2を古い油田に注入することで、油田に残った原油を圧力で押し出しつつ、CO2を地中に貯留するというCCUSがおこなわれており、全体ではCO2削減が実現できるほか、石油の増産にもつながるとして、ビジネスになっています。

「ゼロエミッション火力」という言葉は魅力的ですが、その実現までには様々な課題があります。大切なのは、理想を追いながらも現実的な道筋を見据えること。日本のエネルギー政策は、その難しいバランスの上に成り立っているのかもしれません。