みなさん、こんにちは!
今回は、「日本企業が東南アジアで展開する脱炭素ビジネスの現状」についてお話しします。東南アジア各国が脱炭素に取り組む中で、日本がどういった役割を果たしているのか、そしてどのようにビジネスチャンスが広がっているのかを探ります。
深刻化する東南アジアの環境問題
国際エネルギー機関(IEA)の報告によると、2022年のアジアのCO2排出量は世界全体の半分を占めています。特にASEAN地域では、大量のCO2を排出する石炭火力発電所が総発電量の4割以上を占めており、脱炭素が世界中で重要視される中、環境への影響が深刻な問題となっています。
各国も危機感を持って対策に乗り出しています。例えば、タイは2030年までに温室効果ガスを30%削減する目標を掲げており、海外からの技術投資が増えれば40%まで引き上げる意向です。インドネシアも同様に、2030年までに32%の削減を目指し、先進国からの支援があれば43%まで高める計画です。
国際エネルギー機関(IEA)は、エネルギーの安全保障や安定供給を目的として設立された国際機関です。第1次石油危機後の1974年11月に設立されました。加盟国はOECD加盟国で、石油の備蓄基準を満たすことが参加要件です。経済協力開発機構(OECD)の枠内にある自律的な機関で、本部はパリにあります。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/energy/iea/iea.html
日本企業による具体的な取り組み
このような状況の中、日本企業は独自の技術力を活かして、様々な形で東南アジアの脱炭素化を支援しています。
1. 排出量の見える化
新興企業の「ゼロボード」は、2023年3月にタイのバンコクに現地法人を設立。企業の電気使用量などを基に、CO2排出量を算定するシステムを約300社に提供しています。現地企業の多くは自社の排出量すら把握できていない状況であり、欧米企業との取引や株式市場への情報開示のニーズから、この技術への需要は今後さらに高まると予想されます。
2. 次世代エネルギーへの挑戦
IHIは、2026年にマレーシアで画期的なプロジェクトを開始します。CO2を排出しないアンモニアを燃料とするガスタービンの商用運転です。さらに、インドネシアでは既存の火力発電所の燃料を石炭からアンモニアに転換する技術開発も進めています。
3. インフラ整備と新技術開発
住友商事
ベトナムで再生可能エネルギー由来の電力送電網構築に取り組んでいます。
出光興産
マレーシアの国営石油会社と協力し、次世代航空燃料「SAF」の供給網構築を検討中です。
シンガポールの研究機関「ISEASユソフ・イシャク研究所」が実施した調査で興味深い結果が出ています。ASEAN加盟国の政府機関など約2900人を対象にした調査で、気候変動対策の技術革新をリードする国として、日本が29%で首位に選ばれたのです。これは米国(18%)や中国(14%)を大きく上回る評価です。日本の技術が信頼されていることが分かります。
日本政府による支援体制
日本政府は「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」を主導し、日本と豪州、そして東南アジアの計11カ国が参加する枠組みを構築しています。すでに164件もの協業プロジェクトが進行中で、着実な成果を上げています。
東南アジアでは、自動車や不動産分野で中国の影響力が強まっていますが、脱炭素技術の分野では日本が強みを発揮しています。武藤経済産業相も「巨大な脱炭素市場を生み出し、投資を呼び込むことが日本企業のビジネスの後押しになる」と述べており、今後も政府による支援が期待されます。
アジア・ゼロエミッション共同体(Asia Zero Emission Community、AZEC)は、経済成長と環境保護を両立させることを目的とし、アジア地域全体で温室効果ガスの削減を目指す国際的な枠組みです。
https://sustech-inc.co.jp/carbonix/media/azec/
中小企業にも広がるチャンス
ゼロボードのような新興企業の成功は、大企業だけでなく、優れた環境技術を持つ中小企業にもビジネスチャンスがあることを示しています。東南アジアの脱炭素市場において、日本の存在感がますます高まっていくのかもしれません。
日本の環境技術と東南アジアのニーズが見事にマッチしている今、脱炭素ビジネスは日本企業にとって大きなチャンスであると同時に、地球環境の保護という重要な課題解決にも貢献できる、意義深い取り組みと言えるでしょう。
日本の企業が環境問題に対してどのように取り組んでいるのか、そしてそれが世界にどのような影響を与えているのか、これからも注目していきたいですね。