みなさん、こんにちは!
以前ご紹介した宮城県の水田を活用したソーラーシェアリングの実証実験では、「農業と発電の両立」が未来の農業の選択肢になり得ることを感じました。今回は、その“その先”を見せてくれるような、すでに大規模に実現されている事例――千葉県匝瑳市の取り組みに注目します。
実験段階ではなく、すでに地域のエネルギー供給と農業がしっかりと機能しているこのプロジェクト。そこから見えてくるのは、持続可能な社会に向けたヒントだけでなく、「人が集う場」としての新しい農地のあり方でした。

6000kWの発電と有機農業が共存する町

千葉県匝瑳市飯塚地区は、国内最大級のソーラーシェアリングエリアとして注目されています。
運営する「市民エネルギーちば株式会社」は、2014年にわずか90万円でスタート。当初の発電規模は35kWだったそうですが、今では23ヘクタール、6000kWにまで拡大し、なんと一般家庭1900世帯分の電力をまかなっています。
驚くべきは、そのスケールアップの裏にあるのが「太陽光発電で耕作放棄地をよみがえらせたい」という、たった一つの想いだったということ。思いの強さと継続の力に、改めて背中を押される気がします。

農地としても“ちゃんと”成立

ソーラーシェアリングと聞くと、「農業はちゃんとできるの?」という疑問が湧くかもしれません。
匝瑳市では、パネルの遮光率を30%に抑え、高さ3mの架台を設置することで、農機具の利用も可能にしています。実際に、有機農法で麦や大豆を育てており、2026年以降は稲作にも挑戦予定とのこと。以前の記事で紹介した“水田×太陽光”とまさに重なるチャレンジですね。
農地が電力の生産現場にもなるというアイデアは、場所さえあればどこにでも応用できる可能性を秘めていると感じました。

地域を巻き込む“電力と農”のプラットフォーム

この取り組みが面白いのは、単なる発電ビジネスでは終わっていないことです。
年に2回の収穫祭には地元住民だけでなく、全国から関心を持つ人が集まり、地域ににぎわいをもたらしています。
さらに2019年の台風による停電の際には、ソーラーシェアリングの施設を「無料充電ステーション」として開放。こうした非常時対応も可能にするのが、地域と密接につながっているこのシステムの強みです。

「副収入」以上の価値を持つ発電

前回の記事でも紹介したように、営農と発電の組み合わせは農業経営のリスク分散としても注目されています。匝瑳市の例では、発電だけでなく、“地域コミュニティの活性化”や“耕作放棄地の再生”、“災害時のレジリエンス強化”など、複数の課題を同時に解決している点が非常に興味深いです。
農業は「作物を育てること」だけではなく、地域の営みそのもの。そこにエネルギーという機能が加わることで、まったく新しい価値が生まれているように感じます。

未来の農地は「人が集まり、電気も生まれる場所」

農業と発電を同時に実現する「ソーラーシェアリング」。その可能性は、「副収入」や「エコ」だけにとどまらず、地域の未来像そのものを変えつつあると感じました。
椿さんの「耕作放棄地をよみがえらせたい」という想いが、今では人も集まり、エネルギーも生まれる“拠点”へと育っています。この動きが全国に広がれば、「農業の未来=エネルギーの未来」となる日も、そう遠くないかもしれません。