みなさん、こんにちは!
今回は少し変わった発電方法をご紹介します。
舞台は福岡。海水と淡水の“塩分の違い”を使って電気を生み出す「浸透圧発電」という技術が、全国で初めて実用化されました。世界でもデンマークに続き2例目という、かなりレアな取り組みです。

海水と下水で発電?仕組みはこうなっている

浸透圧発電という言葉、初めて聞いた方も多いかもしれません。
この技術は、濃度の異なる液体同士を「水だけを通す膜(浸透膜)」で仕切ることで、濃度差による“水の移動”を発電エネルギーに変えるというものです。
福岡のプラントでは、真水を取り出した後の「濃縮海水」と、下水処理施設からの「処理水」を使っています。この2つを膜で隔てると、処理水が濃い海水側に吸い寄せられ、その移動によって圧力が発生。その力でタービンを回して発電する仕組みです。
まさに、自然の原理をうまく利用した再エネ技術ですね。

年間発電量は88万kWh、CO2排出ゼロ!

福岡市の「まみずピア」に設置されたこの発電設備は、1年間で約88万キロワット時の電力を生み出す見込み。これは一般家庭約230世帯分に相当する電力量だそうです。
もちろん、発電時にCO2は一切排出されません。しかも、天候や時間帯に左右されないのが大きな強みです。太陽光や風力が「変動型」なら、この浸透圧発電は「安定型」。再エネのバランスを取るうえでも貴重な存在になるかもしれません。

20年以上の研究を経て実用化

実はこの浸透圧発電、2000年から福岡地区水道企業団と水処理プラントメーカーの協和機電工業が共同研究を重ねてきたもの。20年以上の試行錯誤を経て、ようやく実用化にこぎつけたというのも驚きです。
施設の建設費は約7億円。まずは施設内で使用する電力をまかないながら、今後5年間で発電効率や運用性を検証していくとのことです。

ビジネス的にはまだ“遠い技術”?でも注目はしておきたい

弊社のある会津は海に面していないので無理ですが、もしこの技術が将来的にコストダウンし、スケール化できるなら、福島沿岸部での再エネ選択肢として視野に入れておくべきだと感じました。
また、淡水化施設が近くにある地域や、下水処理施設を併設できるような立地があれば、技術的には応用可能。今は“探索”フェーズの技術かもしれませんが、将来的な“深耕”候補になる可能性もあります。

“海”が持つ可能性に、もう一度目を向けたい

これまで「太陽光」や「風」など、目に見える自然エネルギーに注目しがちでしたが、「水の塩分濃度差」というあまり意識してこなかった自然現象にも、これほどのポテンシャルがあるとは。
改めて、「エネルギーは身の回りにある」という視点を思い出させてくれる話題でした。