みなさん、こんにちは!
ChatGPTをはじめとした生成AIの進化が話題にならない日はありません。その裏側で膨大なデータを処理する データセンター の重要性はますます高まっています。
しかし、データセンターの増加は電力需要や環境負荷という大きな課題も抱えています。今回はその現状と、解決に向けた道筋について考えてみました。
大都市圏に集中するデータセンターのリスク
現在、日本には約222カ所のデータセンターがあります。数だけ見れば米国のわずか4%程度ですが、その多くは 関東(64%)、関西(24%)と大都市圏に集中しています。
この集中立地には経済合理性がありますが、問題も大きいです。
- 災害リスクが偏る
- 地域の環境負荷が急増する
- 地元住民からの反対運動が起きる
例えば東京都昭島市では、予定されるデータセンター1棟の年間CO₂排出量が市全体の実績の3年分にあたる170万トンにもなると試算されています。まさに「地域全体を飲み込む規模」のインパクトです。
解決のカギは「脱炭素化」と「分散化」
データセンター問題に対する解決策として浮かび上がっているのは、
すでに北海道・石狩や苫小牧では、再エネ100%で稼働するデータセンターが計画されています。冷涼な気候や土地の広さを活かし、「再エネ×データ処理」のモデルが進みつつあります。
発電所の隣接地に小型データセンターを置く「逆転の発想」や、分散型の“エッジDC”構想が登場。これは災害リスク回避や、自動運転・遠隔医療の低遅延処理にも役立ちます。
地域の再エネ活用がカギを握る
北海道だけでなく、東北や福島といった地域にも注目が集まっています。
- 冷涼な気候 → サーバー冷却コストの削減につながる
- 再エネ余剰電力の活用 →
太陽光・風力・地熱が豊富で、余剰分をデータセンターで消費可能 - 地価の安さ → 大規模施設の建設に有利
福島をはじめとする東北地方では、震災後の再エネ導入が進んでおり、「再エネ電力を地元で消費する地産地消型データセンター」のモデルを描くことができます。これは地域の雇用や税収の確保にもつながり、地方創生の切り札にもなり得ます。
EPC事業者にとっては、単なる発電所建設だけでなく、「地域再エネ × データセンター × インフラ整備」 を一体提案することが、差別化のチャンスになるかもしれません。
技術革新、IOWN(アイオン)構想がもたらすインパクト
さらに注目すべきはNTTのIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想。
- 消費電力を最大100分の1に削減
- 通信遅延を200分の1に改善
この技術が実用化されれば、データセンターの電力問題は一気に緩和される可能性があります。まさに「技術で解決する未来像」です。
一人ひとりが心豊かに暮らしていけるWell-beingな世界を実現する上で、ICTのさらなる発展が求められています。しかし、流通するデータ量の増大により、大量のコンピュータが導入され、膨大な電力を消費しています。今後も著しく増加を続けることが見込まれており、ICTは持続可能性の危機に直面しています。この問題を解決し、Well-beingな世界の実現をめざす次世代情報通信基盤の構想、それがIOWNです。
EPC事業者にとっての新たなチャンス
ここで少し業界視点を交えてみます。
データセンター建設の拡大は、EPC事業者にとって大きなビジネス機会となります。
- 太陽光・風力・BESSの施工に加え、DC建屋+冷却+非常用電源を一体設計できれば差別化が可能
- 自治体が進める「再エネDC誘致」に早期に参画し、立地選定や環境アセス段階から入り込むことが重要
- 単なるEPC収益にとどまらず、運営支援・PPA・アグリゲーションまでO&M契約を重層化することで長期収益モデルを構築可能
つまり、EPCは「発電所を建てるだけ」から「再エネとデータを結ぶ基盤をつくる」へと役割を広げるチャンスを得ています。
未来を見据えた私たちの選択
AI社会は避けられません。その基盤となるデータセンターの増加も止められません。だからこそ、脱炭素化と地方分散化を前提とした持続可能な拡大が求められます。
そして、業界に携わる私たちにとっては、EPCの枠を越えて「電力とデータをつなぐ新たなビジネス」をどう設計するかが問われています。
効率的に業務を進め、生成AIの力も取り入れながら、次の成長分野に挑戦する。その視点を持つことが、未来の競争力につながるのではないでしょうか。