みなさん、こんにちは!
今日はベルリンのIFAで発表されたサムスンの新しいAI家電構想を取り上げます。
洗濯機の消費電力を最大70%削減できるという省エネ性能に加え、これが単なる“家計の節約”にとどまらず、電力システム全体に広がる可能性を考えてみたいと思います。
AIで洗濯機の電力を70%削減?
サムスンの「Bespoke AI」による展示では、洗濯機の電力消費を最大65〜70%削減できるとの発表がありました。AIが運転条件を最適化することで、無駄な電力を大幅にカットできる仕組みです。
さらに掃除機や食洗機など、他の家電にもこの省エネAIが広がれば、家庭全体の電力消費は大きく減るかもしれません。
家電が“スマートな需給リソース”に?
ここでポイントとなるのが、こうしたAI家電が単なる「家庭内の省エネ」で終わらない可能性です。
例えば、太陽光発電や家庭用蓄電池(BESS)と組み合わせれば
- 昼間の余剰電力をAIが効率的に家電運転に回す
- 夜間や需要ピーク時に消費を抑制することで系統を助ける
- 蓄電池と連携すれば「電力を貯めて、最適なタイミングで消費」
つまり、家電そのものが地域の需給調整リソースとして機能し得るのです。
新しいPPAスキームの可能性
さらに発展すれば、家電の省エネAIは産業用にも波及し、こんな未来像が考えられます。
太陽光+AI家電のセット契約で「電気代が安く、CO2も削減」するモデル。
家庭内の冷蔵庫や洗濯機が集まって「仮想発電所(VPP)」の一部となり、電力市場で収益化。
工場設備やビルの空調にAI制御を導入し、契約電力を下げることで電力コストを削減。
ここまで来ると、家電はもはや「省エネ機器」ではなく、エネルギー事業の一翼を担う存在になります。
VPP・DR・需給調整市場との接続
EPC事業者やアグリゲーターにとって、この動きは単なる“家電の省エネ”以上の意味を持ちます。
家庭内AI家電を束ねることで、kW単位ではなくMW単位のリソースを形成。再エネの変動吸収や出力平準化に寄与可能。
系統混雑や需給ひっ迫時に、家電群を制御して需要を削減。家庭の「見えないピークシフト力」を事業者が調整力として商品化できる。
2021年から本格化した市場において、分散型リソースを束ねて入札。AI家電が「調整力商品」として登録されれば、事業者に新収益源が生まれる。
ここで重要なのは、AI家電の普及が進むほど、需給調整市場にアクセス可能な分散リソースが自然に増えていくという点です。
サムスンのような家電メーカーの戦略が、電力業界に直接的なインパクトを与える時代になりつつあります。
家電の省エネは“電力ビジネス”への入口
今回のサムスンの発表は、AI家電がどこまで家庭の省エネに役立つか、という話題にとどまりません。
「家庭 → 地域 → 産業」とスケールアップすることで、電力需給の新しい仕組みを作り、PPAやVPPと結びつけてビジネスモデルを広げていけるのです。
AI家電は、電気代削減ツールであると同時に、再エネ社会を支えるインフラの一部へと進化していくかもしれません。