みなさん、こんにちは!
今日は国交省が発表した「鉄道の脱炭素化」に関する方針の中から、ちょっと専門的だけど実は身近な「VVVF制御」という技術についてご紹介します。
普段、電車に乗っているときに耳にする「ウィーン」という音、その裏側にある仕組みを知ると、私たちの生活にもつながる話だとわかります。

鉄道のGX戦略とVVVF制御

国土交通省は、2035年までに国内の主要鉄道事業者が保有する「非VVVF車両」を原則全廃し、高効率なVVVF車両に置き換える方針を示しました。

VVVF制御とは

Variable Voltage Variable Frequency(可変電圧・可変周波数)の略で、モーターの電圧や周波数を細かく制御する技術。モーターの速度制御を容易にし、エアコンや電車などでの採用が進んでいます。

身近な例:プリウスのようなハイブリッド車や、家庭用のインバータ式エアコン、ポンプなどでも応用されています。

鉄道に導入するメリット

従来の抵抗制御に比べて大幅な省エネが可能。発進・停止が滑らかになり、電力消費を削減。

VVVF制御をもう少し分かりやすく

VVVFは「速度に応じて電圧や周波数を変える制御」と考えると理解しやすいです。

  • 太陽光発電のPCSは、常に一定の電圧・周波数の交流を作るのが目的。
  • 鉄道や自動車は速度を変える必要があるので、可変の制御が不可欠。

そのため、鉄道だけでなく、エアコンやエレベーター、産業用ポンプなどにも広く応用されてきています。

非電化区間は水素や蓄電池が主力に

鉄道全体の脱炭素化では、非電化区間のディーゼル車を水素車や蓄電池車に置き換える方針も示されています。2030年には水素車両の営業運転を目指すとのことで、鉄道の世界も大きな転換点を迎えそうです。

再エネとVVVF制御の接点

ここで少し再エネの視点を加えてみましょう。
太陽光発電は出力が不安定ですが、VVVF制御を組み合わせれば、始動電流の抑制や可変速運転が可能に。結果として省エネと機械寿命の延長につながります。

農業分野では、ロボット草刈機や自律走行の農機にもVVVF制御を搭載すれば、太陽光発電と直結した効率的な運用ができる可能性があります。

鉄道のGX=再エネ業界への学び

鉄道分野のGX戦略から、再エネ業界やEPC事業者が学べるポイントは多いです。

01

古い設備を効率化技術に置き換える発想

鉄道は非VVVF車両を全廃し、省エネ性能の高いVVVF車両へ更新。

再エネでも、古いPCSや低効率モジュールを最新設備に入れ替えるリプレース市場が拡大する可能性。

02

需給調整技術の積極導入

鉄道は回生電力や超電導送電を組み合わせ、システム全体の効率を上げています。

再エネ業界では、蓄電池やDR(デマンドレスポンス)を組み合わせた需給調整が同じ発想。

03

国主導でのロードマップ明示

鉄道の全廃目標(2035年)と同じように、再エネ分野でも系統制約やカーボンフリー電源比率の明確な目標設定が求められる。

再エネ業界では、蓄電池やDR(デマンドレスポンス)を組み合わせた需給調整が同じ発想。

鉄道業界のGXを見ると、国が明確なロードマップを示し、設備更新を段階的に進めていく仕組みがよくわかります。

これは再エネ業界においても、蓄電池導入やモジュール更新などの市場形成に通じる部分があり、政策と技術進化が連動する重要性を示しているといえるでしょう。

技術の広がりに期待

今回の国交省の方針は、鉄道分野でのカーボンニュートラルに向けた大きな一歩ですが、VVVF制御の技術そのものは私たちの生活や産業にも波及していくでしょう。

  • 鉄道の省エネ化
  • 自動車・ハイブリッド車の効率化
  • 工場・ポンプ・農業機械の省エネ化

このように、「VVVF制御」は脱炭素社会を支える重要な基盤技術といえるのではないでしょうか。

齋藤 浩昭
AiNERGY株式会社 取締役

著者プロフィール
ソフト開発を経て独立し、ITベンチャーを創業(2004年グリーンシート公開、Deloitte Fast50国内3位)。その後、三陸牡蠣復興支援プロジェクトを立ち上げ、3億円超のクラウドファンディングを実現、国内牡蠣業界の革新にも寄与。
2019年MBA取得。2023年からAiNERGYで再エネ×IT事業を推進中。