出典:PR TIMES

みなさん、こんにちは!
今日は「太陽光発電によるオフサイトPPA」が本格的に運用開始されたニュースをご紹介します。
今回のポイントは「複数の需要家を組み合わせることで、太陽光の余剰を減らして効率的に再エネを活用する」という新しい仕組みです。

今回のPPAモデルの仕組み

出典:PR TIMES

ロジスクエア京田辺A

所在地京都府京田辺市
発電容量約1,875 kW
(AC出力ベース)

京都府京田辺市の物流施設「ロジスクエア京田辺A」の屋根に設置された約1,875kWの太陽光発電設備。この電力をエンバイオC・ウェストGKが発電し、JAPEX(石油資源開発)が調達、日鉄エンジニアリングが小売電気事業者として供給し、からくさホテルズ関西など複数の需要家が利用する、というスキームです。

特徴的なのは、需要特性の異なる複数の施設に供給すること。これにより昼間に電力を多く使う施設と、夜間に需要が高い施設を組み合わせることで、太陽光電力の余剰を最小限に抑えることができます。

初年度の発電量は約3,471MWhを見込んでおり、年間で約1,468トンのCO2削減効果が期待されています。

需要家にとってのメリット

からくさホテルズ関西では、この契約により年間使用電力の約23%を再エネに切り替え、約349トンのCO2削減を実現する見込みです。

ホテルや商業施設にとって、再エネ導入は「電気代削減」だけでなく「環境配慮型ブランド価値の向上」に直結します。宿泊者や利用者にとっても「環境にやさしいホテル」としての魅力が高まります。

EPC・事業者にとっての示唆

今回の事例はEPCや発電事業者にとって大きなヒントがあります。

01

需要家の組み合わせ設計

単一需要家では太陽光の余剰や需給ミスマッチが発生しやすいですが、複数の需要家を組み合わせることで、電力利用効率を最大化できます。

02

特定卸供給事業者の役割

小売電気事業者が需給データを一元的に扱うスキームは、ガバナンス面での透明性や制度対応の観点でも参考になります。

03

調整力との接続

日鉄エンジニアリングは蓄電池や需給調整市場活用まで見据えており、単なる「電気の売り先」ではなく、VPPやDRと接続可能なリソース形成につながります。

地域・社会的な意義

今回のPPAモデルは、特定の地域に閉じる「地産地消モデル」とは異なりますが、需給調整をうまく設計すれば地域内の複数施設での応用も可能です。

たとえば、物流施設・病院・商業施設・自治体庁舎など、電力需要の時間帯が異なる組み合わせを作れば、より高い再エネ利用率が実現できます。

今後の展望

オフサイトPPAはすでにGoogleやAppleなど海外大手企業が積極的に導入していますが、日本でも制度と事業スキームが整いつつあります。今回の事例は、その「国内展開の加速」を象徴する取り組みといえるでしょう。

今後は、

  • 複数需要家PPAのパッケージ化
  • 蓄電池やDRとのセット提案
  • 地域に根差した「再エネのシェアリング」

といった方向での発展が期待されます。

PPAの次の一歩へ

今回の事例は「単独施設での再エネ導入」から「複数施設を束ねた効率的な再エネ活用」へ進む大きな一歩です。

EPCや事業者にとっては、新たな事業モデルの可能性を探るヒントになり、需要家や地域にとっても持続可能な電力利用の道を開くものといえるでしょう。

齋藤 浩昭
AiNERGY株式会社 取締役

著者プロフィール
ソフト開発を経て独立し、ITベンチャーを創業(2004年グリーンシート公開、Deloitte Fast50国内3位)。その後、三陸牡蠣復興支援プロジェクトを立ち上げ、3億円超のクラウドファンディングを実現、国内牡蠣業界の革新にも寄与。
2019年MBA取得。2023年からAiNERGYで再エネ×IT事業を推進中。