みなさん、こんにちは!
今日はベトナムから届いた「無届け屋上太陽光に対する処罰提案」のニュースをご紹介します。
一見すると「え、屋根に太陽光を載せるのに届け出が必要なの?」と思いますよね。実はこの背景には、ベトナム特有の電力事情と、再エネ普及政策の大きな転換があります。

ベトナムでオンサイトPVでも届け出が必要な理由

ベトナムの国営電力EVNは、無届けで設置された屋根置き型PVに対して「行政罰を検討すべき」と提案しました。背景には次の事情があります。

01

系統安定性の確保

  • 送電網の容量不足が慢性的な課題。
  • 自家消費設備であっても系統に接続されていれば逆潮流が起きる可能性があり、容量を把握しないとリスクに直結します。
02

統計・計画上の把握

  • 第8次電源開発計画では「住宅の50%に屋根置き導入」という目標あり。
  • 導入実績を正確に把握できないと政策評価ができません。
03

安全・品質の担保

  • 規格外機器や不適切工事による火災・感電リスクが問題化。
  • 届け出を通じて最低限の安全水準を管理する意図があります。
04

将来の課金・課税への布石

  • 余剰電力の取引や課税の公平性を担保するため、把握必須。

ベトナムはなぜ「自家消費型」主体なのか

ベトナムは2017〜2020年にFIT(固定価格買取制度)を導入しましたが、短期間で終了。その後は自家消費が主流となっています。

2021年以降、完全に自家消費時代へ

余剰売電はできないか、できてもゼロ~極低価格。
そのため、「需要に合わせた容量設計」「BESS併設による自家消費率向上」が標準となりました。

日本との違い

日本ではまだ住宅用FITや余剰売電が残っており、移行は緩やか。
ただし出力制御の拡大やFIP制度化により、ベトナム同様「自家消費最適化」が主流になる方向に進んでいます。

最適容量シミュレーションの重要性

ここで注目したいのが「設計段階での最適化シミュレーション」の需要です。

  • 発電が多すぎれば逆潮流でカット。
  • 少なすぎればメリットが出ない。
  • 蓄電池は高価だが、自家消費率引き上げには必須。

このため、屋根面積+需要パターンに基づく最適容量シミュレーション(AC・DC・蓄電池)は、ベトナム・日本・欧州いずれでも非常に需要が高まると予想されます。

欧州ではすでに「屋根PV+BESS最適化」が住宅市場の常識化しており、日本も同じ流れに入っていくでしょう。

日本への示唆、法制度と技術開発の両輪

ベトナムの事例から見えてくるのは、電力は国が強く管理するインフラであり、制度によって市場形態が大きく変わるという点です。

  • FIT終了 → 自家消費型一択へ
  • 届け出義務化 → 設備の「見える化」と「制御」が進む
  • 結果として → シミュレーション技術・制御技術の必須化

日本も「売電頼み」から「自家消費最適化」へ移行している最中だということです。

自家消費時代に求められる次の一手

ベトナムの届け出義務化は、単なる規制強化ではなく「自家消費時代における系統安定化と市場管理の仕組み」だと言えます。

そして、この流れは日本や欧州にも共通しており、再エネの普及は「最適設計」と「制御技術」なしには進まないという事実を示しています。

著者コメント

私がこの記事で感じることは、電力については重要なインフラのために、やはり国(法律)によって大きく制限されていることと、世界的にも自家消費型太陽光は増加の一途を辿っているという事実です。
したがって、現在私達が取り組んでいる自家消費型太陽光でのソリューションは世界にも通用するだろうと思っています。

齋藤 浩昭
AiNERGY株式会社 取締役

著者プロフィール
ソフト開発を経て独立し、ITベンチャーを創業(2004年グリーンシート公開、Deloitte Fast50国内3位)。その後、三陸牡蠣復興支援プロジェクトを立ち上げ、3億円超のクラウドファンディングを実現、国内牡蠣業界の革新にも寄与。
2019年MBA取得。2023年からAiNERGYで再エネ×IT事業を推進中。