みなさん、こんにちは!
今日は経産省が発表した「FIP事業者とアグリゲーターをつなぐマッチング・プラットフォーム」についてご紹介します。
一見すると「そんなの民間でやればいいのでは?」と思いがちですが、ここには大きな政策的な狙いが隠れています。
国がマッチングサイトを用意する理由
経産省が今回の施策に力を入れる背景には、次の3つがあると考えられます。
FIP移行を加速させる制度インフラ
FIT電源のままでは需給調整力が不足。
しかし発電事業者は「どのアグリゲーターと組むべきか分からない」という情報格差がある。
公平性と信頼性の担保
民間が運営すると「手数料ビジネス化」や偏りが発生。
国が公式サイトで公開することで中立性と安心感を提供。
政策パッケージとの連動
出力制御順序の見直し(2026〜27年度にFIT優先停止へ)と組み合わせ、「FITからFIPへ移行せざるを得ない状況」を制度的に作り、その出口としてマッチングサイトを提示。
電力は国民生活の基盤インフラであるため、あえて国が前面に出て「制度と市場の接続」を整備するわけです。
民間では難しい理由と、逆に見えるチャンス
理屈の上では民間も「再エネ案件とアグリゲーターをつなぐマッチングサービス」を作れます。
しかし現実には次の課題があります。
- 収益モデルが成立しにくい(手数料を取れば参加者が減る)
- 地方事業者や小規模案件まで網羅できない
- 制度改正との連動ができない
つまり民間がやっても「部分的サービス」にとどまり、全国規模・制度連動型の仕組みは国しかできないのです。
民間プレイヤーにとっての打ち手
では、私たち民間事業者はどこで勝負すべきでしょうか?
マッチングサイト自体は“名刺交換会”。そこで収益は生まれません。勝負はその裏側にあります。
アグリゲーター側
BESS併設や再エネ証書取引など差別化プランで顧客を囲い込む。
EPC・施工業者
FIP移行に伴う「リプレース需要」や「蓄電池設置工事」を受注する。
金融・投資家
移行案件へのファイナンスや「FIP+BESS投資」でリターン確保。
コンサル・サービス事業者
市場価格予測や需給最適化のコンサルを提供して顧問料を得る。
今回の発表が示すこと
経産省がFIP事業者とアグリゲーターのマッチングを制度的に整えることは、単に移行を促す施策にとどまりません。これは「再エネ電源を市場統合するための基盤づくり」であり、電力システムの透明性・公平性を高める動きでもあります。
業界全体から見ると、FIP移行は避けられない流れであり、発電事業者・アグリゲーター・EPC・金融機関など、各プレイヤーがそれぞれの役割で“ポジション取り”を迫られる局面に入ったと言えます。
つまり今回の仕組みは、再エネ事業のビジネスモデルそのものが「FIT頼み」から「市場参加型」へと転換するターニングポイントを示しているのです。
著者コメント
今回、国がFIP事業者とアグリゲーターのマッチング・プラットフォームを用意するという発表には、長らくIT業界に身をおいた自分としては正直驚きました。しかし、電力は国民の命を支えるインフラであり、利益度外視で制度最適を優先できるのは国だけです。
私たち民間事業者にとって、この“名刺交換会”自体で収益は生まれませんから勝負はその裏側です。例えばFIP移行に伴うBESS導入やリプレースEPC工事、環境価値の証書取引、需給調整コンサルとか。
そこでどのような収益モデルを作れるかが生き残りを決めるのだろうと思っています。