みなさん、こんにちは!
今日はちょっと変わった温暖化対策のお話です。EVや水素だけではなく、エンジン車のままでもCO2を削減できるかもしれない、そんな技術「CO2キャプチャー」をご紹介します。

DACとCO2キャプチャーの違い

すでにご存じの方も多いと思いますが、DAC(ダイレクト・エア・キャプチャー)は大気中から直接CO2を回収する技術です。ただ、大気中のCO2濃度はわずか0.0425%。そこから効率的に分離するのは非常に難しいのが実情です。

そこで注目されているのが、自動車の排ガスからCO2を直接回収するアプローチ。走行時の排ガスは大気よりも高濃度でCO2を含むため、効率的な回収が期待できるのです。

海水からCO2を回収するDOC(ダイレクト・オーシャン・キャプチャー)という仕組みも下記の記事でご紹介しています。

自動車メーカーの取り組み

スズキ

CO2キャプチャー装置をトラックに搭載し、回収したCO2を農業ハウス栽培に利用する試みを発表。

マツダ

ゼオライト系吸着剤を使った回収技術を開発中。実験ではWLTCモード走行で約50%のCO2を回収できたとの報告も。

いずれもまだ装置は大きく、車載用としての実用化には課題が多いですが、方向性としては「走るだけでCO2を減らすクルマ」という未来像が描かれています。

技術的なハードル

現状の課題は主に3つです。

01

装置のサイズと重量

現段階では車両に搭載するには大きすぎる。

02

吸着剤の選定

液体吸収剤は効率が高いが重い。固形吸着剤は軽量だが効率が落ちる。

03

連続運転の実現

実験室では成果があるが、実際の道路走行環境で安定稼働させるにはさらなる改良が必要。

組み合わせが生む新しい可能性

記事が示唆しているのは「既知の技術をどう組み合わせるか」という視点です。

マフラーや触媒といった排ガス処理技術はすでに自動車に組み込まれています。そこにCO2キャプチャーを追加し、さらにe-fuel(合成燃料)と組み合わせれば、カーボンニュートラルどころか「カーボンネガティブ」なエンジン車すら夢ではありません。

水素由来の合成燃料は、エネオスが横浜市の実証プラントで開発しています。

自動車業界のCO2キャプチャーの試みは、再エネ分野にも示唆を与えます。

枯れた技術(成熟した技術)をどう組み合わせるかで、新しい付加価値が生まれる。それはBESS(蓄電池)や再エネ発電にも同じことが言えます。

未来の可能性

EVシフト一辺倒ではなく、多様なアプローチで温暖化に立ち向かう自動車業界。

その中で「走るだけでCO2を減らすクルマ」が実現すれば、技術的にも市場的にも大きなインパクトとなるでしょう。

まだ研究段階ですが、発想そのものが“新しい道”を切り開いているように感じます。

著者コメント

この自動車におけるDACはまだ研究開発段階ですが、枯れた技術(安定している技術)の組み合わせなら今更研究開発も必要なく、そうした「材料」は私達の目の前に転がっています。大切なのは、その「組み合わせの視点」を持ち続けることだと思っています。

再エネ発電やBESSでも、既知の技術を組み合わせることで新しい付加価値を生み出せる余地は大きいと思います。今回のCO2キャプチャーの話はその良いヒントになるのではないでしょうか。

齋藤 浩昭
AiNERGY株式会社 取締役

著者プロフィール
ソフト開発を経て独立し、ITベンチャーを創業(2004年グリーンシート公開、Deloitte Fast50国内3位)。その後、三陸牡蠣復興支援プロジェクトを立ち上げ、3億円超のクラウドファンディングを実現、国内牡蠣業界の革新にも寄与。
2019年MBA取得。2023年からAiNERGYで再エネ×IT事業を推進中。