みなさん、こんにちは!
今日は東京都が発表した「グローバルサウスにおけるGX技術展開支援」の取り組みについてご紹介します。
東京都がなぜ海外、それも新興国支援に踏み込むのか、そして企業にとってどんなチャンスがあるのかを整理してみました。

都が支援するGX海外展開の概要

東京都は9月12日、中小・スタートアップを中心とした26社を採択し、グローバルサウス諸国(アジア・中東・アフリカ・中南米の延べ18カ国)でGX技術の展開を支援すると発表しました。

採択事業の例としては、

  • 廃棄物から水素を生成する都市型循環モデル(インドネシア)
  • ソーラーシェアリングのフィージビリティスタディ(UAE)
  • タンザニアでの初期費用ゼロの分散型太陽光発電事業
  • 省エネ空調や森林由来クレジット創出
  • 商用EVやドローン配送の導入

などが含まれています。

補助率は調査段階で最大2/3、実証段階で最大1/2と手厚く、上限はそれぞれ1〜3億円に設定されています。

東京都が海外支援を行う理由

「なぜ東京都が海外でのGX支援を?」と疑問に思う方も多いと思います。

背景には次のような狙いがあります。

輸出産業の育成

都内企業が成長市場に進出することで、利益や雇用が東京に還流する。

東京発GXの国際実績づくり

採択企業を束ねて成果を示すことで、東京を「気候テックの実装拠点」として国際発信できる。

政策学習と調達力の強化

海外での実装データを都内の再エネ・省エネ調達に活かす。

気候貢献の物語性

コスト効率の高いグローバルサウスの排出削減に寄与することで、東京の国際的評価を高める。

民間投資の呼び水

補助金でリスクを下げることで、現地や国際金融の投資を呼び込みやすくする。

要するに「東京発のGX企業を国際競争力ある産業に育てる」ことが大きな目的です。

企業側にとってのメリット

支援を受けて海外進出する企業には、次のような利点があります。

資金リスクの低減

最大2/3の補助で調査・実証の初期コストを抑えられる。

現地展開の支援

事務局や連携サポーターによる規制対応・企業マッチングの伴走支援。

新興国市場への最短ルート

早期にリファレンス案件を獲得することで、将来の事業拡大につなげられる。

現地課題に直結した実装モデル

廃棄物、水資源、暑熱、遠隔物流といった課題に合うソリューションを実証できる。

資金調達・商社連携の加速

「東京都採択」という公的認定が信頼性の証明となり、金融や大手企業との連携が進みやすい。

カーボンクレジット収益

バイオ炭や森林植林によるクレジット販売など、副収益の可能性が広がる。

要するに「東京発のGX企業を国際競争力ある産業に育てる」ことが大きな目的です。

国の施策との位置づけ

実は東京都の施策は“国の制度の縮小版”という位置づけです。
経産省のグリーンイノベーション基金(2兆円)や、環境省のJCM(二国間クレジットメカニズム)など、すでに国レベルのGX海外展開支援策は存在しています。

東京都の取り組みは、都市としてのモデルを作り、国の制度と接続させるトライアルとも言えます。
今後、国の枠組みが拡大していけば、地方発のEPCモデルにも参画チャンスが広がるでしょう。

東京都GX支援が示すもの

今回の発表は、東京都が「単なる都市行政」から一歩踏み出し、国際市場で戦えるGX産業を育成しようとしていることを示しています。グローバルサウスは今後もっともエネルギー需要が拡大する地域。そこでの実績づくりは、将来の競争優位につながります。

東京都の制度はあくまでパイロットですが、国の制度と接続し、地方発のGX企業にも波及していく可能性があります。

私たちもいつでもグローバル展開できるよう、技術・事業力を磨いておくことが重要だと感じます。

齋藤 浩昭
AiNERGY株式会社 取締役

著者プロフィール
ソフト開発を経て独立し、ITベンチャーを創業(2004年グリーンシート公開、Deloitte Fast50国内3位)。その後、三陸牡蠣復興支援プロジェクトを立ち上げ、3億円超のクラウドファンディングを実現、国内牡蠣業界の革新にも寄与。
2019年MBA取得。2023年からAiNERGYで再エネ×IT事業を推進中。