みなさん、こんにちは!
今日は、北海道の小さな町・鹿追町で繰り広げられている大きな挑戦についてお話しします。この町では、酪農で生じる未利用資源を活用して脱炭素と地方創生を同時に実現しようという試みが進んでいます。その斬新な取り組みと未来へのビジョンを見ていきましょう。
酪農の「未利用資源」がエネルギーを生む
鹿追町といえば、酪農の町として有名ですが、そこには意外な課題がありました。それは、乳牛が出す「ふん尿」の処理。大量のふん尿をどう活用するかという問題に、町はバイオガスプラントという技術で挑みました。
このプラントでは、ふん尿を微生物が分解することでバイオガスを生成。その主成分であるメタンガスを利用して、町の一般家庭の約9割もの電力を供給できるようになったそうです。さらに、バイオガス生成後の消化液は有機肥料として再利用。これにより、農家の肥料コスト削減と環境改善が実現しました。
ただ廃棄するだけではなく、資源を最大限に活用するというアイデアが素晴らしいですよね。特に、酪農家の負担を軽減しながら環境にも優しい形を作り上げている点に感動しました。
再生可能エネルギーであるバイオマスのひとつで、有機性廃棄物(生ゴミ等)や家畜の糞尿などを発酵させて得られる可燃性ガス。このようなガスの熱源利用は、南アジアや中国で古くから行われている。一方、欧州の酪農国では1980年代末から家畜糞尿の処理を主たる目的として取り組まれてきたが、近年では化石燃料に替わるエネルギー源としての活用が地球温暖化防止対策に有効であるとして、廃棄物処理の観点以上に注目されてきている。埋立地等で有機性廃棄物の分解過程等で発生し大気中に放散されるメタンガスは、CO2の21倍の温室効果を有し、京都議定書の対象ガスのひとつに定められている。バイオガス利用により、大気中への自然放散が抑制されることもまた、温暖化防止対策につながる。なお、発酵処理後に残る消化液は、液肥と呼ばれる良質な有機肥料として農場に還元される。
https://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&ecoword=%A5%D0%A5%A4%A5%AA%A5%AC%A5%B9
バイオガスから水素まで
鹿追町の挑戦はこれだけではありません。バイオガスからさらに水素を生成し、水素ステーションや燃料電池車(FCV)へとつなげる取り組みも行われています。驚くべきことに、乳牛1頭が1年に出すふん尿から得られる水素で、FCVが約10,000km走行可能なんだとか。
また、災害時には水素を使った燃料電池で電力を供給できるため、地域のレジリエンス向上にも役立っています。このような「分散型電源」としての水素の可能性には無限の広がりを感じますね。
再生可能エネルギーを地域で循環させるだけでなく、防災の視点も取り入れている点が鹿追町の柔軟な発想を表していると思います。
燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)は、水素などの燃料を使用しモーターを駆動させる車の事で、近年「究極のエコカー」としても注目を集めています。燃料電池車(FCV)は、車体に搭載された燃料電池で発電を行い、得られた電力で電気モーターを駆動して走行します。水素と酸素の反応によって電気を得るため、排出するのは水だけで、走行時に二酸化炭素が発生しません。燃料電池の源となる水素は水素ステーションから補給し、酸素は空気中の酸素を使用します。
https://www.mitsui.com/solution/contents/solutions/battery/55
「水素」と「酸素」を化学反応させて、直接「電気」を発電する新しい概念の発電装置です。燃焼により一旦熱に変換する従来からの熱機関従来の発電方式より高い効率が期待できます。「電池」という名前はついていますが、蓄電池のように充電した電気を溜めておくものではありません。燃料電池の燃料となる「水素」は、天然ガスやLPG、メタノールなどを改質して作るのが一般的でしたが、カーボンニュートラルに向けて、最近は再生可能エネルギーによる電気分解やバイオマスを原料とした製造方法の実用化が進められています。「酸素」は、空気中から取り入れます。水素と空気の供給を続ける限り継続して発電が可能となります。また、発電と同時に熱も発生しますので、その熱を活かすことでエネルギーの総合利用効率をさらに高めることが可能です。
https://fccj.jp/jp/aboutfuelcell.html
レジリエンス(resilience)は「回復力」「弾力性」「適応力」などの意味を持つ言葉で、ラテン語の「fusilier(跳ね返る)」から派生したと言われています。元々は、物質が外力を吸収して変形し、元の形に戻ろうとする性質をあらわす物理学用語として使われていました。レジリエント(resilient)という形容詞で使われることもあります。そして近年ではビジネスや生態学、防災、教育などさまざまな分野で「これからを生き抜くために不可欠な回復力や適応力」という意味で用いられるようになりました。
https://sdgs.kodansha.co.jp/news/knowledge/42586/
自然と共に「人づくり」を目指す
さらに、鹿追町では自然環境を活かした教育や観光にも力を入れています。然別湖周辺を「ゼロカーボンパーク」として整備し、環境問題について学べるプログラムやワーケーションの場を提供する計画を立てています。
特に注目すべきは、参加者が地元の課題に触れ、地域とともに解決を目指す仕組みです。これによって生まれる企業や個人との新しいつながりが、地方創生の新しいモデルになりそうですね。
観光や教育を絡めた取り組みは、ただ「見て学ぶ」だけでは終わらない点が素敵だなと思いました。体験型の学びは参加者の意識を変える力があると感じます。
鹿追町の挑戦は、地域資源をフル活用するだけでなく、環境・エネルギー・教育をつなげた包括的な取り組みでした。今回のモデルは北海道で盛んな酪農を上手く使ったモデルですが、それぞれの地域に合った地域資源を活用したモデルが他でも広がれば、脱炭素社会への道筋がより具体的になるかもしれません。
鹿追町のようなチャレンジ精神に刺激を受けつつ、私たちもできることから始めてみたいですね。