みなさん、こんにちは!
今日は、ソーラーシェアリングと自然栽培米を活用した「脱炭素日本酒」、井上酒造の「推譲」についてお話しします。この日本酒の背景には、地域社会や地球環境を考え抜いた深いストーリーが詰まっています。

二宮尊徳と「推譲」の思想

井上酒造が生み出した「推譲」という日本酒、その名前には深い意味が込められています。「推譲」は、江戸時代の思想家・二宮尊徳が唱えた「報徳思想」に由来しています。この思想は、「余剰が出たらそれを今消費するのではなく、将来や社会のために使う」という教えを柱にしています。
井上酒造 代表取締役の井上寛さんは、「推譲」を開発する前から二宮尊徳の教えを学び、日本の農業や地域のために何か役に立つことができないかと模索しており、井上酒造の酒造りに活かしています。二宮尊徳の生誕地は井上酒造の酒蔵からわずか2キロの距離で、歴史と地域の結びつきが感じられます。「報徳思想」に基づいた持続可能な生き方、現代にも必要な考え方ですね。

報徳思想とは

「報徳思想」とは「至誠(しせい)」を基本とし、「勤労(きんろう)」「分度(ぶんど)」「推譲(すいじょう)」を実行するという考え方で、この「報徳思想」を実践するのが「報徳仕法」です。
二宮尊徳は報徳思想を広め、実践することにより、ききんや災害などで困っていた多くの藩や村を復興しました。

  • 至誠 :「まごころ」のこと。二宮尊徳の仕法や考え方、そして生き方の中心となるもの。
  • 勤労:物事をよく観察・認識し、社会の役立つ成果を考えながら働くこと。
  • 分度:自分の置かれた状況や立場をわきまえ、それぞれにふさわしい生活をすることが大切。また、収入に応じた一定の基準(分度)を決めて、その範囲内で生活することが必要。
  • 推譲:将来に向けて、生活の中で余ったお金を家族や子孫のために貯めておくこと(自譲)。また、他人や社会のために譲ること(他譲)。

https://www.city.moka.lg.jp/kakuka/bunka/gyomu/rekishi_bunka/rekishi_bunkazai/5/21192.htmls

ソーラーシェアリングと自然栽培米

「推譲」の米作りに用いられているのが「ソーラーシェアリング」です。農地に太陽光パネルを設置し、発電と農業を両立させるというこの仕組みは、日本の耕作放棄地問題への解決策として注目されています。
面白いのは、自然栽培という農薬や化学肥料を使わない方法で作られる米が「推譲」に使われていることです。こうして収穫されたお米を酒造りに活かすことで、製造過程でのCO2排出をゼロにする取り組みが実現しています。
このプロジェクトを進めるために、地元の農業者たちは試行錯誤を続けてきました。収穫できなかった年もあったそうです。その苦労が酒の味に込められているのだと思うと、さらに特別な一杯に感じられますね。

地域をつなぐ、未来をつくる

「推譲」のもう一つの魅力は、地元への強い思いです。井上酒造では、全て地元で完結する酒造りにこだわり続けています。また、「推譲」以外にもミカンのジュースと組み合わせたスパークリング酒など、新しい商品も生まれています。これらの取り組みを通じて、地域の課題を解決しながら新しい価値を創出しているのが素晴らしいですね。
井上酒造の7代目 井上寛さんの言葉、「もっと農業に関心を持ってもらうとともに、脱炭素の取り組みにも目を向けてもらいたい」というメッセージには共感しかありません。異常気象が頻発する今こそ、私たち一人ひとりが行動する時だと感じます。

「推譲」は、単なるお酒ではなく、地域や環境、未来への思いが詰まった一杯です。その味わいを楽しむことで、私たちも地球や地域社会のことを考えるきっかけになるのではないでしょうか。